探偵は岐阜の居酒屋にいる<22>

ここで探偵はいきなりハジキに飛びかかる。突然のことでびっくりした幹部が一瞬「?」と思った瞬間に、探偵は幹部の顔面にめがけて頭突きをくらわす。

幹部はその頭突きをさけることができずに顔面に命中した。そしてそのまま幹部は気を失う。

探偵と松田は建物の表に出る。

そこには側転道場の連中が10人、いや二十人ぐらいはいるか。

探偵と松田はその真ん中を、「おつかれさまでーーーす」と平然と通りの抜けようとした。

しかしそうは簡単にことは済まない。

探偵の顔をしていったのが一人いたのだ。

「きさま・・・・、お客さんだ、接待してやれ」と叫んだ。

「へい」と連中が全員声をそろえて、二人に襲いかかる。

 

ここから二人は脱出を試みる。

二人を捕まえようとする連中の中で乱闘になり、そこから抜け出すために闘う。

松田は何故か強い。格闘技の経験があるのか、あるいは格闘技の熟練者なのか・・とても強い。ばったバッタと的をなぎ倒す。

素手で闘えば怖い者知らずだ。

探偵は探偵でまたまた強い。こちらは格闘技というよりも、我流の喧嘩という流儀か。動体視力は抜群。一人を倒すとすぐに次の敵を見定める。そしてすぐに相手を料理する。型もなにもないが、とにかく強い。

探偵は岐阜の居酒屋にいる<21>

外がなにやら騒々しい。右翼の車両から聞こえてくる大きな音声が聞こえてくる。松田がその音に気がつき・・

「おい、そろそろおいとましようぜ」と探偵に語りかける。

幹部と対面していた探偵は、「じゃぁ、本日はこれで・・・」と慌てて立ち上がる。

でもそうはたやすく返してくれないらしい。

幹部は探偵の前に立ちはだかり、「そう仰らず、代表も戻ってくる頃ですし・・もう少しゆっくりしていってくださいよ」

「そうしたいんですが、時間がありませんので」と探偵は少々まずくなってきている雰囲気に焦りをみせる。

「それではまた」と行きかける。

 

すると背中でカチャといういやな音がする。

探偵はピンときた。ハジキの音だと・・。そっと振り返る。

やはりそうだ、幹部はつり上がった目をしてハジキで自分を狙っている。しかも目の前で。

そして漢文は声音も口調も変えて、「ゆっくりしてけや」。

「何が目的かはなしてもらおうか」

「そういうおもちゃはしまっておきないさいよ、もう」、余裕を見せて。

探偵は岐阜の居酒屋にいる<20>

探偵はこのままいくと松田が暴走するかもしれないと思い、

「すいません、先ほどの話してですが・・」と幹部に切り出す。

「中には生きるヒントもつかめないような人もいるのではないでしょうか」と切り込んで。

「例えば、一昨年の9月、木曽川の川原でなくなった青年はお宅の熟成だったとか」

幹部は一見正直に答えた。「ええ、残念ながら」と。

「確か山下和夫君とか・・・シンナー中毒だったかな」

 

彼はなくなる二ヶ月ほど前から姿を見せなくなっていた。いわゆるオチこぼれというやつなんじゃないのか・・と逆に開き直られる始末。

「どうも我々の限界を認めるようで辛いのですが」

 

山下君が亡くなる前日、ここにいたという情報があるんですがね・・と探偵が言うと、「そんな話をどこで・・」。

「さあ」と探偵はとぼける。

「彼は二ヶ月前からここにはいませんでした、絶対に」

「ということにしているんですよね」、探偵はねちっこく追求をする。

「それが事実です」、幹部はブチ切れる寸前の様子。

探偵は岐阜の居酒屋にいる<19>

探偵と松田は側転酒場を訪問する。フリーライターという名刺を持って取材の振りをする。バレバレなのにこんな方法で訪問するとは、いかにも探偵らしい。

「お宅の理念はなんですか?」と探偵が聞く。

「我々の理念は屯田兵のようなもの。屯田兵はご存じですか?」と側転道場の幹部が答える。

「もちろんです、うちの曾祖父は屯田兵でしたから・・」と、探偵はお安い会話をする。探偵は真剣に回答をしているのたが、実際には全く滑稽なやりとりだ。

 

「だから我々はオチこぼれの子達を受け入れている。そしてここで彼らが生きていくための教育をしっかりして、かれらに生きるエネルギーを与えるのがしごとなんです、そして天下国家を語れるようにしたいと思う・・・」

「すばらしいお考えです・・」、探偵は歯の浮くような言葉をはさむ。

ここで松田が「ここで君は何をしているのかな?」、同じ部屋の隅で正座をしてうつむき、そして体を震わしている若者に向かって話しかける。

その幹部は、「もうしわけありません、彼は今鍛錬中ですので部外者とは話が出来ませんから、話しかけることはやめてください」と怒鳴った。

それでも松田ははなしかける。

「おい、大丈夫か、体が震えているけど・・・」

「ちょっと、ちょっと、話しかけないでください」

探偵は岐阜の居酒屋にいる<18>

探偵はある晩に錦で偶然山下和夫の父親を見かけた。ちょうど高級クラブから出てくるところだった。このチャンスは絶対に逃せないな・・・・、探偵は山下和夫の父親をあるビルの屋上に連れ込んだ。

そして体半分を屋上から・・。そのまま手を離したら転落するだろう。その状態で、

「あんたさあ、遊ぶ金はどこからでてんるだよう」

「ううううう、馬だよう」

探偵はそんなことは信じるはずもなく・・「馬ねぇ」と転落させるような勢いだ。

探偵は自分の推理を聞きたいか、と尋ねた。父親は必死に「聞きたい、聞きたい」と泣き叫ぶ。じゃぁ、きかせてやろう・・と体がようやく屋上に戻る。・

一昨年の9月に放火の件で警察が和夫のもとに聞き込みにきただろう。警察が帰ったあと側転道場にあんたはすぐに電話したんだろう。そのときに和夫が電話にでたんじゃないか。その翌日に和夫は発見された、死体でね。マスコミは和夫は2ヶ月前から側転道場に出入りしていないと報じていた。でもそれっておかしいよな。「あんたは前の日に和夫と話をしているのに」。そして事実を隠す代わりに金を要求したのだろう。図星だ。

しかしそのとき父親は不適な笑いを見せる。

「連中はオレに手出しをできねー、証拠があるんだよ」

「しかしな、息子をネタにやくざに金ゆするか、だから素人はこわいよ」

「お前に何が分かる、何がわかるんだよーー」父親は真実を吐露すると同時に大声で泣き叫ぶ。

 

探偵と松田は側転道場に乗り込むことにした。

 

探偵は岐阜の居酒屋にいる<17>

探偵は山島の殺害現場に立ち寄ってみた。

そこに一人の女性が現れた。

そして現場に向かって手を合わせ、深く祈る、山島のために。探偵はその姿を見て感動した。その人はクラブのママだ。

「先日はありがとうございました、また、遊びにいらしてね」

「また」

「ママ、山田京子ってご存じありませんか?」

ままは「は?」と知らないと断言する。

 

この名古屋には桐山組が勢力を伸ばしていた。

探偵はその昔、学生時代に家庭教師をやっていた。そのときにやっていたのがこの桐山組のお嬢さんだ。「成績が上がらなければお前の大切なところを切り取る」と脅され、毎日が地獄の苦しみの日々だった。その縁で今でも探偵は桐山組と付き合っている。

お嬢様に変な虫がつかないか、そのことを調査するのが主な仕事だ。

しかし最近は桐山組の組長も年とり、一時のような勢力が亡くなってきた。

特に関西から安藤組が勢力を増してきて、それを押しのけるだけの迫力が亡くなってきている。

ある日、桐山組の斉藤が尋ねてきた。斉藤はオギャーと生まれたときから多分その筋の人と分かる雰囲気を持っていたのだろう・・、そんなことを思わせる笑顔の全くない人物だ。しかし悪い男ではない。

探偵は「弁護士の南って男をしらないか?」と聞いてみた。

斉藤は「そんなものつついてどうする、大けがするぞ」

「ちょっと南に借りをつくっちまってな、どうやって返そうか、考えている」

「おもしろそうじゃないか」

斉藤は続ける。

「南は安藤組の顧問弁護士をしている、関連会社の窓口も全部南がやっている、代議士とのコネもある、安藤とつるんで相当利益をもらってるはずだ」

「ということは地上げもやっているということだな・・・スナック京子のあるビルにも地上げを仕掛けた、しかし、なかなか言うことを聞かないので、山下和夫をつかって放火した、しかしドジを踏んだ、死人をだしちまった、山田京子という死人を・・・、それで口封じに消された」

斉藤をそれを聞いて・・・「黒幕はしっているのか?」

「知るわけない、それを聞きたい」

「さぐってやろうか、お嬢さんのことでは世話になっている、借りを返すだけだよ」

探偵は岐阜の居酒屋にいる<16>

喫茶店から探偵はある会社に電話する。松田はゲームをやっている。

「ボーリング場で待つと加藤さんにお伝えください」と一方的に話しをする。「去年の2月の件で話があると・・・そういってもらえればわかりますから・・・そうそう、何か目印になる物もってきてたぐさいね、漫画のジョーイを持参してください、お願いしますね、私ですか、私の特徴は額がそこそこ禿げていますからすぐに分かりますよ」

電話をきる。

松田はゲームをしながら「あのさぁ、お前は本当は山田京子と名乗っている女、きになつてるんだろう」

「それは依頼人だからなぁ」と探偵。

 

山田京子とは何者なのか?

山田京子は3年前に放火で亡くなっている。

少し調べてみるか・・と、山田京子の実家を尋ねることにした。そこは岐阜の山奥であった。母親が親切にも対応をしてくれた。

「娘の名を語る人物ですか・・」いきなりの探偵の質問に母親はとまどいを隠せない。

探偵は「京子さんに成り代わって恨みを晴らそうとしたり、そんな人はいませんか」

その質問に母親は途方に暮れたような顔をして、「何を思おうがあの子が帰ってくるわけはありませんからね」

それでも探偵は「では、突飛な質問を一つ」と言葉を重ねる。

「足長おじさんってご存じですか?京子さんに店を持たせてくれた人物なんです」

「あぁ、それは多分父親だと思います」と意外な回答が母親の口からでた。

京子の父親は今の夫ではない。京子の父親はあの子が生まれて突然にいなくなった。もともとは学生運動の活動家で、何か深刻な対立があったみたいで・・・。私にはよく分からないけど。でもどうしようもない事情があったと思うの。正義感の強い、とても素敵なひとだったから。私捨てられたの・・・ばかみたいでしょ。

と京子の母親は嘆き悲しむ仕草で探偵に切々と語り続けた。

「いずれにしても昔の話ですよ」と母親は話しを結ぶ。これ以上は思いだしたくないようだ。しかし探偵はまだ聞き出したいことがある。

「その実の父親が京子さんにお店を持たせてくれた、と」

「私にははっきりとは言いませんでしたが、それは親子のことですから分かります」

「その方に会うことはできませんか?」

「それは無理です、彼は去年に亡くなりましたから」

「なくなった?」

「見ず知らずの女性を助けようとして・・・・・無茶というか、馬鹿というか、彼らしい」

「ひょっとして山島太郎さんですか」

「えっ、ご存じですか」

本物の山田京子の父親は山島太郎だ。

山田京子が放火で亡くなったことと、昨年の2月に山島太郎が死んだこととが繋がった。無関係と思われていた二つの事件が繋がった。

探偵は岐阜の居酒屋にいる<15>

いつもの居酒屋、いつもの探偵と松田・・。

探偵が松田に「お前は貧乏だよな」

「うん、おれは貧乏だ」

「そんな貧乏なお前は50インチのテレビ、ほしいと思うか?」

「ほしいな」

「でも貧乏だとかえないよな」

「買えないね」

「じゃぁ、どうしたら買える」

「馬がガンガン来たら買えるんじゃないか」

「そんなガンガンくるか」

「そんなにこねーな」

「だよな」

「それが人生ってもんだよ」と松田。

探偵はふと考える。「あのおっさん、どこから金、ひっぱっているんだろう」

 

そこに店の電話がなる。大将が電話を探偵に渡す。

「もしもし」

「京子です」

「10万円、新たにお振り込みしていただいてありがとうございます、で、今回はどこに埋められるんですかね」

「引き受けてくれるの?」

「のりかかった船だから仕方がないです」

「前みたいに危ないことはないと思う、ある会社に電話して加藤という男を呼び出してほしいの」

「呼び出してどうする」

「加藤が来るかどうかを確認するだけ」

「でも、オレは加藤の顔をしらない」

「何か目印を持たせたら?」

「おお、ナイスアイディアだ」

「本当に信用していいのかしら・・・」と京子は言う。

「信用できないことはお互い様だっていうことを忘れないでほしいね」と探偵。

京子は「いつかすべてをお話しますから、お願いします、あなたの不名誉になるようなことではありませんから・・」と心の内をのぞかす。

以前の電話とは違って、何かしら京子との会話を楽しんでいる風でもある。

探偵は岐阜の居酒屋にいる<14>

探偵はスナック京子で働いていた女性を捜し出した。

その女性はこういった・・「京子さんは店を持つのにとても努力した。しかし、地上げ屋ともめて火をつけられた。かたくなに店を売ることを拒んだからだ」と。理由は店を持たせてくれた人に悪いからだといっていたらしい。その人物のことを京子は「足長おじさん」と呼んでいたらしい。

とにかく火をつけた馬鹿の家を訪ねることにした。

 

その名は山下和夫という。

家を訪ねたら母親が在宅していた。「青少年からシンナーから守る会から来ました」と言ったら、探偵は簡単に家の中に入ることができた。

母親はため込んでいた思いを聞いてくれる相手が現れたことで、過去のことを何もかもしゃべる。

和夫の父親は昔炭坑で働いていた。和夫はそのころに生まれた。炭坑は閉鎖、そして名古屋に出てきた。

父親はまともに仕事に就かず、そのうちに父親の暴力が始まり、ご多分に漏れずその子供の和夫はぐれて悪の道へと進んでいった。

そんなとき和夫が側転道場に入ると決めたときは、これこそが神の助けか・・と思った。これであの子は救われると。正直ホッとした。

だけど、しばらくして警察がきた。そして「和夫はどこにいる?」って。道場には2ヶ月前からいないらしい。また和夫がなんかしたのかと、心配して心配して・・。

そしたら次の日に・・死んだって。

母親はおいおいと泣き始めた。

母親は思いだしたように「ごめん、今、お茶いれるから」

探偵は「お構いなく」と。

探偵はテレビに気がつく。「大きいテレビですね」

母親は、「うちに似合わないでしょう、家の人最近調子いいんだって・・・」

ちょうどそのとき、その父親が帰ってきた。

探偵を見つけるなり・・「なんだ、お前、警察か?」

探偵はおどおどしながら「青少年をシンナーから守る会の・・」

父親はいきなり「うそだ、うそだ・・・勝手に人を入れるなといっただろう」といきなり母親に向けて暴力をふるう。

探偵はそれを止めにはいるが・・。「でていけーーー」と放り出される。